召しませ!至福のアート体験。
美術館で出合う作品は、あなたに何を語りかけてくるでしょうか。どんな感情を抱かせるでしょうか。面白い、楽しい、きれいといった気持ちを高揚させる作品もあれば、難しい、悲しい、怖いというイメージを呼び起こす近寄りがたい作品に出合う場面もあるかもしれません。その一方で、一目見ただけでは惹かれなかった作品でも、展示空間や展覧会のテーマの違いで改めてその魅力に気が付いたり、過去に見た作品でも隣にいる人との会話や新しく得た知識に影響され新鮮に映ることもあります。あるいは、作家の考え方や制作背景を知るにつれて自身が描いた想像とのギャップに驚くといった経験などは、誰でも身に覚えがあるかもしれません。
本年度開催の「まんなか」展、第1期(春夏季)は「日本のまんなかでアートをさけんでみる」と題し、当館のコレクション作品を中心に、「日本のまんなか」を自称する群馬県渋川市から、あるいは鑑賞者自身から「外側」へアートを発信していくような企画を開催いたしました。続く第2期にあたる本展では「心のまんなかでアートをあじわってみる」と題し、作品に向かい合う人それぞれが自身の心の「内側」へと美術を引き寄せることを提案いたします。
専門的な知識がないと楽しめないと思われてしまいがちな現代美術ですが、本来「鑑賞」することの語源は「味覚」や「趣味」を意味するtasteと同じであり、またそこには個人の「好み」で「判断」する行為も含まれます。今、目の前にある作品と向かい合う時間を、より個人的な喜びを手掛かりにしながら五感に触れるものに寄り添う経験と言い直すことができるのであれば、正しい解釈とは何かと頭を悩ませることからは少しだけ距離を置き、自身の気持ちを拠り所に現代美術への関心を深めることができるでしょう。
思わず写真に撮りたくなる瞬間や、見惚れてしまう場面、作品のどの部分が好奇心を刺激するのか、戸惑いを覚えるのか、改めてご自身の心で感じ取りゆっくり味わってみる、そのようなときをお過ごしください。