むかしむかし、あるところに・・・
「王様だ!」小さい読者のみんなは、すぐにそういうだろうね。
残念ながら、そうではないんだ。
むかし、あるところに一本の棒っきれがあった。
こうして世界でもっとも名高い「ピノッキオの冒険」は始まる。
“ピノッキオ”、かれはあやつり人形なのにあやつられることを拒否して好き放題をする。その結果、苦しい思いをしなければならなくなるというのに…。考えてみれば、私たち人間も見えない運命の糸にあやつられたあやつり人形なのかもしれない。
世界中で親しまれている名作童話『ピノッキオの冒険』は、1883年にイタリアで初めて出版された。作者は、1826年フィレンツェに生まれ、ジャーナリスト、演劇評論家として活躍したカルロ・コッローディ。この本が世に出てから『ピノッキオの冒険』はさまざまな国で翻訳、刊行され、日本においても大正時代に紹介されて以来、現在まで愛読されている。型にはまった道徳の教えであるということを遥かに越えたアイロニーに富んだ面白さが、この物語を魅力的なものにしている。
本展は“ピノッキオ”の生まれ故郷であるイタリアから、同国以外では初公開となる初版本やその挿絵原画を公開。“ピノッキオ”の生まれた当時、1861年のイタリア統一から20年後という大きな変わり目の時代のイタリア風俗を描いた油彩画、初版本以降に出版された挿絵本やその原画もみられる。そのほか、日本でどのように受け入れられたのかをたどるうえで重要な作品、現代のイタリアを代表する作家ミンモ・パラディーノが本展のために制作した作品、合計約200点を紹介。