昭和37(1962)年、それまでやきものはあまり好きではなかった土門拳は、美濃古窯探訪をきっかけにやきものに開眼したといいます。美濃大萓の里で絵志野の陶辺を見、丹波三本峠で穴窯を見、有田泉山で鏨の痕跡を見て、縄文・弥生から連綿とつづく日本の「古代的なもの」を感じとり、引きつけられたのです。
好きになるや、凝り性の土門のこと、一気呵成に信楽、丹波、常滑、九谷、伊万里、瀬戸、備前などを撮り歩き、陶辺や壺や鏨を求める「古窯遍歴」は続いていきました。
そうして取りためた写真は、昭和49(1974)年に写真集『古窯遍歴』(矢来書院)として出版されました。
また、晩年の昭和54年7月、福井に赴き、珍しい越前甕墓などを撮影していますが、これが脳血栓で倒れる前の最後の撮影行となりました。