藤田喬平(1921~2004)は、日本の現代ガラス界における先駆者の1人です。数多く残された作品の中でも、「飾筥(かざりばこ)」のシリーズは、日本の伝統的な美の世界を箱の形態で表現した、作家の最も特色あるガラス造形と言えるでしょう。また、ガラス工芸の長い伝統を持つヴェネツィアに渡り、カンナ(ガラス棒)を用いた繊細で華麗な器や大作のオブジェも制作しています。
当館には、こうした「飾筥」や花器などに加え、無色透明なクリスタルガラスのオブジェが収蔵されています。色ガラスの作家として知られる藤田喬平が、1980年代初めにスウェーデンに赴き、クリスタルガラスという素材に深く関心を寄せて取り組んだ、稀少な意欲作です。
逝去の2年程前に、ガラス工芸の分野では初となる文化勲章を受章され、収集委員や顧問として、当館の運営にも長年お力添えをいただきました。没後20年を迎えるこの機会に、ガラス造形作家 藤田喬平の幅広い造形世界を、当館の収蔵作品をとおしてご紹介いたします。