截金(きりかね)は、極薄の金銀箔を数枚焼き合わせて厚みを持たせ、竹刀で線や様々な形に截り、最新の筆遣いで器物等の表面に貼っていく工芸技法で、日本では平安から鎌倉時代にかけて、仏像や仏画の衣文など仏教美術の荘厳として隆盛をみました。
江里佐代子氏は、このわが国の誇る伝統技法、截金を現代によみがえらせました。昭和20(1945)年京都に生まれ、日本画を学んだ後、仏師・江里康慧氏と結婚。夫君の仏像に截金をほどこすことに始まり、やがて截金を工芸作品に表現し、多くの人々にその美しさを知ってほしいと、独特の創作活動を始めました。氏の創り出す文様には、果てしない宇宙の煌きや神秘性が感じられ、截金の出発点である宗教観と工芸作家としての完成が織り成す、独特の美の世界が繰り広げられています。
また、江里佐代子氏は平成14年、重要無形文化財「截金」保持者に認定され、今後さらなる創作活動と、伝統技術を継承する若手の育成が期待されています。
本展覧会では、江里佐代子氏のこれまでの創作活動を、康慧氏との仏像制作から最新の截金作品まで、衝立・屏風・平面作品・飾筥・盒子・香盒など125点により紹介します。