亀井昭伍コレクションの中から、戦前(昭和10年代)までに製作された、古作こけしと称される作品を展示いたします。
こけしは東北地方固有のもので、江戸末期の文化・文政期(1804~1830年)に木地師が創り出したものと云われています。
私が子供の頃、仙台近辺ではこけしを「木ぼこ」と呼んでおり、どこの家にもある身近な玩具でした。戦後、鳴子に住む漆工家の伯父を訪ねた時に、二人の工人に出会い、各地を転々として廻った木地師の苦労話を聞き、胸を打たれたものです。
昭和20年代から30年代にかけ、仙台の居酒屋“炉ばた”で囲炉裏を囲んで天江富弥さんから伺ったこけしの探求への蘊蓄は、私をこけしの世界へ引き込む大きな説得力となりました。
それから50数年、こけしのとりこになった私は、戦前戦後のこけしを蒐集して参りました。
東北六県に分布するこけしは、その地方独特の文様や表情をしています。最小限の空間の中に、古来の東北人の顔・文化・風土を表現しており、東北の誇る文化的財産と云えましょう。