公益財団法人常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第288回として、「卓上の宇宙 渡辺浩三展」を開催いたします。
洋画家・渡辺浩三(1897~1980)は現在の秋田県仙北市に生まれ、東京美術学校(現・東京藝術大学)で藤島武二(1867~1943)に学んだのち1925年にパリに渡りました。第二次世界大戦前、多くの洋画家たちが日本からヨーロッパに渡って研鑽を積んでおり、パリでも評価された佐伯祐三(1898~1928)は憧れの存在でした。渡欧前から佐伯と親交があった渡辺も、奔放な筆遣いや看板文字の強調など強い影響を受けた風景画を多く描いています。6年間の留学を経て帰国後は妻の実家のある土浦市に住み、官展(のちの日展)と東光展などに静物画を出品しました。この頃の静物画には、ゴッホ風のタッチやキュビズムの静物画にみられる対象の分割など近代西洋絵画に対する研究の跡が見られます。
渡辺は2年後に東京に移ってから量感あふれる裸婦に取り組み、1934年に裸婦群像で帝展特選となり大きく注目されました。しかし渡辺の興味の対象はやはり静物画にあり、同年12月に「2、3年前から裸体の勉強を始めたのですが、勿論私の場合には裸体も一ケの静物のモチーフであって、林檎や酒瓶と何等えらぶところが無いわけです。」と語っています。渡辺はその言葉通り1940年頃から再び静物画に軸足を移し、のびやかな描線と大胆な色彩配置により背景を含めて画面を構成し、独自の境地を開きました。
今展は風景画、裸婦、静物画と多岐にわたる作品18点を二期に分け、前期は年代順に、後期はモチーフごとにその変遷を辿ります。
公益財団法人常陽藝文センター