「年をとったら水のあるところに住みたい」という子どもの頃からの夢を叶え、昭和三〇年(一九五五年)、東京・調布へ移り住んだ武者小路実篤(一八八五-一九七六)。武蔵野の豊かな自然に囲まれながら、午前中は原稿、午後は書画に取り組み、親しい人々の訪れを迎えました。夫婦二人の静かな生活を送りつつも、次々と舞い込む仕事に励み、九〇歳で亡くなるまで忙しくも充実した日々を過ごします。
実篤が「仙川の家」と呼んだ邸宅は、平成三〇年(二〇一八年)に国の登録有形文化財となり、建築から六〇年余りを経て再評価を得ます。また、令和四(二〇二二)年には実篤が愛用した机と椅子が鳥取民藝品であると分かるなど、今もなお新しい発見が続きます。
本展覧会では、実篤自ら「仕事の完成の地」と言った仙川の家での二〇年間を振り返るとともに、暮らしを支えた邸宅や愛用品の数々を紹介します。