江戸東京博物館(東京・両国)では、平成5年(1993)の開館以来、徳川将軍家に伝来した貴重な資料を調査し、その成果を常設展示室で展示してまいりました。これらの事業は徳川宗家と共同で実施してきたものです。今年度は、これまでの展示規模を大きく拡充し、「鷹狩り」という視点から、江戸時代における将軍の権威や支配の仕組みに迫ることとなりました。この特集展示「徳川将軍家と鷹狩り」を、昨年設立された徳川記念財団の特別協力のもと、2005年1月5日より1ヶ月間、開催致します。
日本における鷹狩りの歴史は古く、古代まで遡ります。その後、武士たちの時代がやってくると、鷹は“武の象徴”として位置づけられるようになり、多くの武士たちに尊ばれました。特に下克上で知られる戦国時代、鷹を愛好する武将たちが各地に誕生し、鷹狩は「実力」の象徴としてその地位が確立されました。戦乱の世を武力で統一し、江戸幕府の基礎を築いた徳川家康も、鷹狩りを好んだ武将として広く知られています。
今日、鷹狩りといえば、領内の視察、身体の鍛錬などの目的を兼ねて行われたと考えられています。しかし、鷹狩りは、こうした武人の嗜みといった意味とは別に、将軍と大名の主従関係を緊密にするための儀礼として重要な役割を果たしていたことが近年わかってきました。また、鷹狩りが行われる場、すなわち鷹場についても、そこが単なる鷹狩りを行う場ではなく、旗本領が複雑に入り組んでいた江戸近郊農村を効率よく治めるための制度として機能していたことが明らかになっています。
今回の展覧会では、現在ほとんどみることができなくなってしまった鷹狩りの実態、将軍と大名にとっての意義など、江戸時代の鷹狩りが果たしていた役割について、さまざまな展示資料を通してご覧いただきたいと思います。どうぞご期待ください。