鵜飼美紀は、人ともの、場の関わりをテーマに制作する美術作家です。作品に主に用いられるのは、ラテックスという液体ゴムです。牛乳のような白色をしており、空気に触れると固まり、飴色に変化します。鵜飼は、ラテックスを大きな皮膜にして、空間に配置します。あわく色づいた皮膜の表面は、光を反射し、また透過して、周囲に静かに作用します。見る者は自身の身体を意識し、研ぎ澄まされた意識は外部へも向けられるでしょう。そして、場所や気象条件といった変数に応じて、人の意識と環境との関係は変化します。鵜飼の手にかかると、この素材は無限の可能性をあらわにするのです。
液体ゴムの性質上、作品の制作は展示場所で行われます。今回は、ラテックスを枠に流し込み、乾燥後に移動して設置する作業を、公開で行います。ゲストを招いての共同制作や、対談も予定しています。鵜飼美紀のこれまでとこれからがぎゅっと詰まった公開制作に、どうぞご期待ください。