年々上昇する気温と、それに伴い激しさを増す自然災害。私たちの生活を支えていると思っていた自然環境は不安定性を増し、人間の自然に対する関係を再考することが求められています。しかし現在私たちが知る「人間」のあり方そのものが、自然を管理すべきものとして収奪してきたのだとすれば、そのおなじ「人間」が自然を「救う」ことができるのでしょうか。本展では近代が生み出した自律した主体としての「人間」を見直し、そこから排除された存在や思考に目を向けます。私たちの思考を規定するさまざまな二項対立的な枠組みの境界を撹乱しつつ強かに――野生でも飼われるのでもなく野良のように――息づくあり方や物語に出会うことになるでしょう。
日本とアメリカにルーツを持ち、トランスジェンダー女性として生きるあり方を彫刻で表現する丹羽海子、学校教育を離れ、独学でドローイングを柔らかいウールへと変換し風景を描く䑓原蓉子、品種改良や養殖といった人間のコントロールと動植物の生の関係を取り上げ、映像や料理の作品を作る永田康祐、ブラジルに植民地時代以前から伝わる知識をもとに、植物と人間の関係を問い直す作品を制作するアナイス・カレニンなど、多様な視点から自然を捉える若手アーティストの表現を紹介します。