用件や思いを文字に書き、相手に送って伝える手段が手紙です。手紙を表す言葉は、尺牘(せきとく)・書簡(しょかん)・消息(しょうそく)・便り(たより)・文(ふみ)・玉章(たまずさ)をはじめ大変多くあります。それだけ長い歴史の中で、人々の暮らしに大切な役割を果たしてきたといえるでしょう。
現存する古い手紙といえば、紙という素材が生まれるかなり以前の紀元前24世紀の、粘土板に楔形文字で記された手紙が出土しています。紙に書かれた手紙では、中国楼蘭で発見された李白という西域の役人が送った手紙の草稿で、4世紀中頃のものです。
平安時代の日本では、貴族の間で、季節に合わせて色紙を重ねた美しい消息を折り枝につけて贈ることが流行りました。また、紙が庶民にまで普及してくる江戸時代になると、手紙に書く文章の見本を集めた本が販売され、多くの人々が利用しました。明治時代以降は、郵便制度の確立とともに切手が登場し、戦争時には軍事郵便が兵士と家族の心をつなぎました。
この企画展では、こうした文の形態や、木版刷りや透かし入りなど様々な美しい装飾がほどこされた絵半切・巻紙・便箋や封筒などを中心に、著名人の手紙なども展示いたします。
◎主な展示品
・錦絵 初代広重画「婦久徳金の成木」江戸時代
・初代広重画 封筒刷物
・絵半切「王子稲荷」
・高井嵐山著「女消息往来」江戸時代
・萩原朔太郎抄造 日清戦争透かし入半切 明治時代
・著名人の手紙〔近衛信尹(寛永の三筆)・吉田茂(首相)・宮武外骨(明治のジャーナリスト)など〕