岐阜県美術館の名品を紹介する移動美術館として、掲題の展覧会を開催します。
日本で最も親しまれている西洋絵画と言えば、何と言っても印象派ではないでしょうか。モネ、マネ、ルノアールといった画家達の作品を、誰しもが一度は目にした事があるはずです。しかしその同じ時代に、印刷技術の飛躍的発展を背景に、版画が芸術作品としての位置を確立していったことは、意外に知られていません。
ヨーロッパに版画が生まれたのは、15世紀初頭のこととされています。その主流は銅版画で、創作の手段として、また絵画や彫刻の忠実な複製手段としてさまざまな用途で活用されてきました。しかし19世紀初頭、リトグラフ(石版画)という革新的な技法が誕生したことで、様相は一変します。木版や金属版ではなく、石灰岩を版材として用い、油と水とが反発しあう性質を応用したこの技法は、版を作るための特別な技術を要しないものであったからです。専門の版画家としての訓練を受けていない画家たちが版画に進出し、自らの想像や夢を版画作品として制作して世に送りだしていくようになりました。
本展覧会は、岐阜県美術館のコレクションの中でも、質、量共に世界有数とされるオディロン・ルドン(1840-1916)作品をはじめ、ウジェーヌ・ドラクロワ(1798-1863)、シャルル・メリヨン(1821-68)、ロドルフ・ブレスダン(1822-85)、アンリ・ファンタン=ラトゥール(1836-1904)、マックス・クリンガー(1857-1920)、エドヴァルト・ムンク(1863-1944)の版画作品計60点を紹介するものです。19世紀西洋版画に導かれる幻想の世界をお楽しみ頂きたいと思います。