湯河原の隣町・真鶴で、人知れず絵を描いていた髙良眞木(こうらまき 1930~2011)。社会運動家で童話作家の浜田糸衛(はまだいとえ 1907~2010)と共に暮らしながら、身のまわりの木や花、土地の風景や働く人々の姿を描きました。幼少期の自由学園での自由画教育や、アメリカとパリでの留学経験はあるものの、独学で絵とむきあってきた髙良の作品は不思議な魅力をたたえています。対象にむけられた鋭い眼差しによって画面上に探りあてられた線や色彩は、迫真性を超えて存在感を放ち、観る者の心にせまってきます。
生涯孤高に絵を描き続けた髙良の名は広く知られていませんが、その才能は美術批評家の瀧口修造、州之内徹、画家の中川一政などに評価されています。日中友好と平和、フェミニズムの活動にも尽力した髙良は、自らの目と信念をもってこの世界をみつめ、自然と人々と社会との共生を目指して生きたひとりの画家でありました。
本展では平塚市美術館の特別協力により、同館所蔵の主要な髙良作品を軸に、初公開となるスケッチや挿絵原画、下絵などもあわせて約120点を紹介します。