風景画の巨匠、歌川広重(1797~1858)。その作品は今も高い人気を誇りますが、とりわけ空や海の深く美しい青が印象的です。これは1830年頃から浮世絵に用いられたベロ藍(ベルリンブルー、プルシアンブルーとも)と呼ばれる青色の絵具によるもの。広重は、ベロ藍を用いて刻々と変わる空模様や水面を繊細に表現することで、人気絵師の階段をのぼっていったのです。そしてその豊かな詩情をたたえた作品は、「名所江戸百景 京橋竹がし」がホイッスラー「ノクターン:青と金色―オールド・バターシー・ブリッジ」(イギリス、テート・ギャラリー)に影響を与えるなど、国境も超えて人々を魅了していきました。
本展では広重のベロ藍を用いた名作の数々を中心にご紹介し、愛され続ける広重の青の秘密に迫ります。