内田あぐり(1949年-)は、今日まで一貫して「身体」をテーマに、人間の存在意義やその根源的で深淵な問題について作品を通して問いかけてきました。同時に、古典的な日本画技法や素材についての研究を深めながら先鋭的な日本画表現に果敢に挑み、その可能性を拓き続けています。近年では、人間は自然の一部であるということ、また風景の中に現れる生命の原動力を表現することを意識し、これまでの身体の表現と自然の風景とが一体となった作品を発表しています。
秋野不矩(1908-2001年)もまた、その作品を通して生命を見つめ、新しい日本画表現に挑み続けた作家でした。創画会に所属していた二人は交流があり、内田は秋野の絵画やデッサン、作家としての姿勢に強く惹かれ、最も影響の受けた画家の一人に挙げています。
タイトルの「氾 Fluxes」には、水があふれる、万物は流転する、という意味を込めました。川と森に囲まれた、生命あふれる秋野不矩の故郷、浜松市天竜区。本展では、この地へ取材をした新作と、7メートルを超える大作などの近作を中心に、原点とも言える初期人間像、表現の源であるドローイングを展示することで、内田あぐりの絵画表現の魅力を紹介します。また、秋野不矩作品や、インド滞在時に愛用していたスケッチブックも特別公開いたします。