弘前大学教育学部 出佳奈子(いで・かなこ)研究室と青森公立大学 国際芸術センター青森は2021年度より、近年アートの世界でも注目を集める匂いと嗅覚に関する共同研究を行ってきました。現代アートにおける匂いの可能性を探るべく、2023年度は匂いと記憶のアーティストである井上尚子(いのうえ・ひさこ)さんを迎えて、2023年11月にワークショップを開催しました。ワークショップでは、個々人の匂いの経験から、自分自身や人生を振り返り、他者と語らう時間を持ちました。本展はその成果展であり、他者の匂いの経験から垣間見える、地域の特性、文化や歴史から気づきを得ることで、それぞれの記憶に立ちかえり、過去・現在・未来への感覚をひらいていく場となるでしょう。
アーティストより
この度、青森に実際に訪問し、リサーチで感じた地域特有の文化と歴史、人の気質と責任感強い個性に心打たれました。また、衣食住にまつわる奇数、素数の関係性が民藝のこぎん、藍染、津軽味噌、青森ひばのルーツに隠されており、素数が意味する“自然数で自分自身のみであること”が、匂いの感覚が個人の経験でしかない唯一無二であることにも精通しているため、本プログラムでは、素数年をキーワードに参加者一人一人の人生を匂いから振り返り、個々の人生や環境、歴史を結び、今を生きる自分たちを可視化できない“匂いの世界”から未来を共創する時間となれば幸いです。ワークショップの成果は、2024年2月~3月上旬まで青森で生きる人の匂いの人生として作品化していきます。(井上尚子)