整然と器面に続いていく文様。器種や時を越えて何度も出現する図様。江戸時代に佐賀で作られた鍋島焼(なべしまやき)や金襴手(きんらんで)様式の伊万里焼(いまりやき)のデザインの中には、「繰り返し」の手法が見られます。
鍋島焼は、佐賀鍋島藩(さがなべしまはん)から徳川将軍への献上を目的に創出されたやきもの。佐賀・伊万里の大川内山(おおかわちやま)の藩窯にて製作されたもので、17世紀末期には様式が確立されました。洗練されたデザインが数多見られ、唐花文(からはなもん)や更紗文(さらさもん)、桃文などを繰り返して連続させた構図もそのひとつ。同じ図様が時代を越え、踏み返されることも珍しくありません。
一方の伊万里焼の金襴手も、17世紀末期に成立した様式。佐賀・有田(ありた)の民窯で焼造され、国内外で人気を博しました。様々な文様を組み合わせた緻密な構成が特色であり、皿と猪口(ちょく)などと器種をまたいであらわされる、定番の唐草文(からくさもん)や幾何学文が見られます。また、色違いで表現される図様は、染付(そめつけ)で骨格を描き上絵(うわえ)で彩色する、染錦(そめにしき)ならではの楽しさがあると言えるでしょう。
藩の献上および贈答品であった鍋島焼と、国内外で需要された伊万里焼という性格の違いはありますが、同時代に成立した両様式の中には、「繰り返し」という共通したデザインの方向性が認められます。約80点が織りなす、「繰り返し」の美をご堪能ください。