月明かりと足下を照らす提灯のかすかな灯りだけが頼りだった江戸時代。当時の人々は、夜の闇のそこかしこに潜んでいるであろう妖怪や幽霊たちの存在を信じずにはいられませんでした。人々は異界のものたちを恐れていましたが、怖いもの見たさの好奇心もまた旺盛だったようです。その気持ちに応えて、妖怪や幽霊たちの姿が浮世絵師たちによって多く描かれました。天狗、鬼、幽霊、鵺…。浮世絵にはそんな魔物や妖怪たちとともに、彼らを操る妖術使いの姿も見ることができます。
本展覧会では、三代歌川豊国の《豊国揮毫奇術競》、月岡芳年の《新形三十六怪撰》を中心に、歌川国芳の代表作の一つ《相馬の古内裏》など、さまざまな妖怪画を紹介します。
時に恐ろしく、時にユーモアたっぷりに表現された魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界をお楽しみください。