呉春(ごしゅん)(1752~1811)は江戸時代に活躍した絵師で、呉服里(くれはのさと)(現在の大阪府・池田)で春を迎えた際に呉春と名を改めました。他にも、気楽な場で多く用いた月渓(げっけい)の号でも知られています。与謝蕪村(よさぶそん)(1716~83)のもとで絵画と俳諧を学んだ呉春は、写生を重視して江戸絵画を革新した円山応挙(まるやまおうきょ)(1733~95)とも絵画の技について語り合ったといいます。一世を風靡した呉春の画風は四条派として広がり、近代の京都画壇にも大きな影響を与えました。
本展では寺院の襖絵などの大作を交えて呉春の画業を振り返り、理想を目指して洗練されていく画風の変化を見ていきます。また、絵画のみならず俳諧や謡曲といった芸事に通じていた様子もご覧いただきます。移りゆく画風や、様々な人との交流の背景には、呉春の軽やかな人間性があったように思われます。江戸絵画のひとつの頂点ともいえる洗練された技で描かれた作品にふれ、酒脱でいて親しみやすさもある呉春の魅力をぜひご堪能ください。
(担当 仁方越洪輝)