地域に活動拠点を置きつつインターナショナルな活動を行い、日本の演劇を牽引する長谷川孝治率いる弘前劇場の公演を行います。今回は、高知との縁が深い別役実の新作書き下ろし作品を上演します。
ここは、東北のとある地方。とある小さな駅のプラットホーム。下手はずれに電信柱が立ち、電線が彼方の山に消えている。
電車が轟音を立てて通りすぎると(その駅には停まらなかったはずなのだが)、中年の男の旅人がひとりホームに立っている。「そうなんだよ。昔、この駅に降りた記憶があるんだ・・・」。もちろん、それがいつ、どこへ行くためのものだったかはわからない。
電車が通りすぎる度に、人々が降り立ち、男と触れ合い、去ってゆく。その過程で、男にとってのその場所の意味が、おぼろげに見えてくる。「もしかしたら私は、そのころ妹を亡くして、傷心の旅に出ようとしていたのかもしれない・・・」
何ものかに呼び覚まされた賢治の化身が、自分自身の賢治であることを確かめるべく、賢治ワールドを辿る。