詩人として知られる小熊秀雄(1901~1940)は、独自の風刺的な目をもつすぐれた画家でもありました。
彼は北海道小樽に生まれ、稚内、樺太、秋田などで恵まれない少年時代を過ごしたあと、姉を頼って旭川市に住み、新聞記者として、詩、童話、挿絵、評論などで活動をはじめたほか、地元の絵画グループに出品もしました。昭和3(1928)年に東京へ移住し、現在の豊島区池袋周辺の住宅を転々としながら、そのあたりに住む靉光、麻生三郎、大野五郎、寺田政明、長谷川利行、松本峻介など、いわゆる「池袋モンパルナス」の若い画家たちと交流しました。この戦前の東京時代に小熊はすぐれた詩人として活躍しましたが、同時に多数の興味深いペン画や油彩の自画像などをのこしています。それらは、小熊の内面を語る油彩画から、独自の軽妙なタッチで市井の人物や風景を描いたデッサンまで実に多彩です。
この展覧会は、小熊秀雄の画家としての側面に焦点を当て、その全貌を現在確認できる可能な限りの作品約170点によって検証するとともに、小熊秀雄と交流のあった「池袋モンパルナス」の画家たちの作品約60点をあわせて展示し、昭和戦前期の芸術家たちの生き様や社会との関連を考えようとするものです。