工芸は生活の芸術とも言われます。わたしたちが生活の中で眼にし、手で触れる“用の美”は、わたしたちの美的センスをストレートに表現したものでもあるでしょう。この展覧会では、鎌倉時代から近代までの福島ゆかりの工芸品、福島で作られてきた工芸品約100件から、福島の美的センスの歴史を垣間見てみたいと思います。そのために「祈りのかたち」「くらしの美」という二つのテーマを設けました。
祈りのかたち
寺社などで儀式や日常で用いられてきた宗教具は、仏や神への思いをこめて大切に守り伝えられてきました。奉納品には神仏への様々な願いがこめられ、供養品には亡くなった者への想いが託されました。
これら祈りを宿した品々は、祈りの強さを映した荘厳で精緻な工芸の優品です。
くらしの美
茶の湯、能などの遊芸は、文化の凝縮された形として暮らしに豊かさをもたらしてきました。刀の鐔や鞘などの装身具は、見を飾るものであればこそ独自のセンスが発揮される品です。そして季節感や素材の妙を取り入れた様々な飲食器は、日本の豊かな食文化の一翼を担っています。
これら暮らしを彩る美は、福島で生まれた工芸品の活躍の場でもあります。