1959年に東京藝術大学の助手であった若かりしころ、平山郁夫は学生を引率した東北写生旅行で、奥入瀬や八甲田山などを巡りました。当時は被爆による後遺症で体調も思わしくなく、また創作上の不振などが重なった時期でもありました。そのような状況の中で見た奥入瀬渓流は、平山に「生きる喜びを心から教えてくれた」といいます。その体験をもとに、仏法を求めて砂漠を往復し、苦しみを経験し乗り越えた三蔵法師の姿を表現する《仏教伝来》を描き上げ、初めて美術界で評価されたことで、それまでの迷いから抜け出ることができました。画家として生きる道を見出した彼はその後、導いてくれた玄奘三蔵の歩いた道を自ら体験することを決心しました。仏教伝来の道を歩くことによって、平山郁夫は文化の源流をたどっていきました。
本展覧会では、文化の源流をたどる旅での発見をモチーフにした平山作品を紹介します。併せて第二展示室では「スーパークローン文化財敦煌莫高窟第57窟」を展示中です。