古今雛とは、安永年間(一七七二~八一)に江戸十軒店の人形師・初代原舟月が創始し、二代原舟月が完成させた江戸(現在の東京)生まれの雛人形です。その特徴は、瞳に玉眼を入れた写実的な表情と、女雛の袖口から単を大きく見せ豪華な天冠を添えるなどの華麗な仕立てにあるとされています。江戸での流行を受け、京都を中心とする上方においても古今雛を参照した品が製作されたと考えられていますが、上方では瞳にガラスを入れる玉眼ではなく、筆で描く描き目が主流で、江戸の古今雛の特色は必ずしも反映されていません。当館がこれまで古今雛として展示してきた雛人形も多くは描き目であることから、近年は「京風古今雛」として展示してきました。
それでは、江戸で流行した「古今雛」とはどのような雛人形だったのでしょうか。その本来の姿を探るため、本展では、近年新たに発見された二代原舟月作とみなしうる古今雛飾りを紹介します。
当館が所蔵する京風古今雛と並べてご覧いただくことにより、江戸と上方、それぞれの土地の好みを感じていただければ幸いです。