西洋における版画の歴史は、14世紀末頃までさかのぼると言われています。以来、一種の複製技術として発展した版画は、グーテンベルクによる活版印刷の発明とも相まって、イメージによる情報伝達に大きく寄与してきました。版画が「伝える」メディアであるとするならば、他方、その鑑賞の醍醐味は、画面に描かれたものを「読みとる」ことにあるともいえるでしょう。
本展覧会では、当館のコレクションに加え、東京の国立西洋美術館および町田市立国際版画美術館所蔵の貴重な作品を含む全67点(前・後期)の西洋版画を、描かれた主題の内容や表現の様式によって4章に分類してご紹介します。聖書の物語を描いた西洋版画黎明期の作品、オールドマスターによる複雑で機知に富んだ寓意画、小説や戯曲の世界を精緻に描き出した挿絵、そして物語に従属することをやめた独創的な近現代の作品まで、原典をもとに画面をじっくりと読み解くことで、きっと西洋版画の新たな魅力を発見していただけるでしょう。“物語る”西洋版画の世界を、どうぞお楽しみください。