古筆とは古人の書という意味ですが、狭義には平安、鎌倉時代の貴族が認(したた)めた歌集などを指します。これらは室町時代後期には、1頁ごと、あるいは数行ごとに分割切断され、茶の湯で床を飾る掛軸や収集・鑑賞のために手鑑へと改装されました。特に、貴族趣味を反映し、美麗な料紙に書かれた流麗な古筆は、江戸時代の大名家でもこぞって収集されました。
徳川美術館は「重之集」、「名家家集切」といった尾張徳川家に伝わった平安時代の古筆から、近年寄贈を受けた「石山切」や「関戸本古今和歌集切」など、名だたる古筆を多く収蔵しています。本展では、これら古筆の名品をご紹介します。