いのち
清里フォトアートミュージアムは、三つの基本理念、「生命あるものへの共感」「永遠のプラチナ・プリント」「若い力の写真:ヤング・ポートフォリオ」に基づき、収集・展示を行っております。
このたび、清里フォトアートミュージアムでは、収蔵作品より構成いたします「クラブ・パラディーソ - 写真をめぐる愉しみ」展を開催いたします。
クラブ・パラディーソパラダイス“Club Paradiso”とは、楽園の名を冠した架空のクラブです。クラブ・パラディーソは、さまざまな国籍の、さまざまな年代の作品群が繰り広げる異なる音色の演奏空間 ―ちょうどジャズクラブでのセッションを想像していただければよいでしょう。そこは多様な「写真」が織りなす音の実験場であり、それを愉しむ人々が集うライブハウスなのです。
ジャズでは、演奏家が原曲を自由に演奏し、今感じていることをストレートに表現する、その即興性と個性のぶつかりあいがライブの大きな魅力となっています。写真は、ある瞬間と写真家の視点が呼応して、レンズを通した光が銀粒子をより分けるように走り抜け、画像として記録されます。写真においては、この凝縮された時間がジャズのセッション的な要素を感じさせるのではないでしょうか。あるいは、暗室内において、写真家の手が光を思い通りに印画紙上に棲み分けさせていく ― 写真家アンセル・アダムスは「ネガは譜面、プリントは演奏である」という言葉も残しました。また、「スピードの芸術」とも言われる写真は、スピードを瞬時に捉える技術もさることながら、写真を見るとき、その画像は私たちの視覚を瞬時に刺激して、するすると記憶の糸をたぐり寄せイメージの中へ引き込んで行きます。空間に放たれた音のゆらめきと、写真のもつ移ろいやすさもどこかで結びついてくるようです。
収蔵作品により構成する本展では、写真史上既に評価の定まった作品から、若い写真家を支援する公募「ヤング・ポートフォリオ」を通して収蔵した現代作家の作品まで多様な作品を展示しクロスオーバーたします。展示空間内では、異なる個性の交差に熱を帯び、自由な精神が静かに漂う様をお楽しみいただけることでしょう。イメージの錬金術師が奏でる未知の世界を愉しみにいらっしゃいませんか。
ようこそクラブ・パラディーソへ ―。