「大きなものにも魂は一つ。
小さなものにも魂は一つ。
小さなものの魂を描きたい。」
毎日新聞夕刊1980年11月1日付「展示作品で抗議」より引用
オチ・オサム(1936-2015)は、福岡市を拠点とする前衛美術グループ「九州派」の中心メンバーとして謎めいたオブジェ作品を発表し、晩年まで孤高の存在として内から湧き出るビジョンを表現し続けた作家です。
「九州派」時代のオチは、アスファルトなど身近な事物を絵画やオブジェの素材とした作品制作を先導し、生活に根差し表現するという姿勢を体現しました。1960年代後半からはヒッピー文化に刺激され、絵画制作に集中して取り組みます。この頃登場する、小宇宙のような空間に浮かぶ球体はオチの代名詞となり、2015年に没するまで大小とりどりの球体を描き続けました。
オチの活動を貫くのが、生活と制作が一続きであるという態度です。自宅では膨大な数のドローイングやコラージュを制作し、あふれる創作意欲で日々新たな表現を試みていました。
美術館初の回顧展となる今回、オチが残した作品等の調査に基づき、これまで十分に光の当たらなかったオチ・オサムの全貌をご覧いただきます。