新庄市出身の近岡善次郎(1914-2007)は、東京・文化学院美術部で有島生馬や石井柏亭から洋画を学び、卒業後は美術団体・一水会を中心に活躍しました。
1956年近岡は文部省留学生としてヨーロッパに渡り、西洋の古典や当時の美術界の情勢を見聞しながら画家としての在り方を模索します。これが東北地方の出自であることを強く認識するきっかけとなり、帰国後は東北の民間伝承や、そこで生きる人々の心情などをテーマとした油彩画を精力的に発表。63年には秋田と青森の土着信仰をもとにした作品で安井賞を受賞しました。
本展では2007年に寄贈された近岡の油彩作品のなかから、キリスト教絵画の影響を受けた母子像のほか、日本の霊場や神仏など、聖なるイメージがあらわされた作品に焦点を当てます。また山形の民話や東北の祭りから着想を得た作品などもあわせて展示し、郷土への慈愛に満ちた近岡の絵画世界を紹介します。