古代ローマの大プリニウスの『博物誌』には、コリントの陶器商の娘が旅立つ恋人の姿を残しておくために壁に影をかたどったというギリシア人の説話が書かれています。この物語は、18世紀後半から19世紀初めには、絵画の起源として引き合いに出されました。そして実際、ヨーロッパの美術の歴史を見てみると、「ひとを描く」ことは作品制作の重要な要素のひとつでした。たとえば自画像は、自らの技量を示すことのできる題材であると同時に、さまざまな新しい表現の実験の場でもありました。肖像画は、画家たちにとって重要な生活の糧となっていました。また、物語に登場する人物を描いた作品もあります。この展覧会では人物表現の豊かさをご紹介します。