古くからヒトをはじめとする生き物たちは、自然環境の影響を受けながら、移動を続けることで生きてきました。生まれた場所、定住する場所、訪れた場所、そしてこれから行く場所は、今たまたまの現在地である青森と、どのようにかかわり合うのでしょうか。そして様々な場所の環境や、生命などの存在、歴史や記憶と私たちはいかに語り合い、時に交差し、つながり直しながら、生きていくことが可能なのでしょうか。
表現活動を行う人々が全世界から集う場である国際芸術センター青森で行う本展には、「現在」という意味をもちながら、海流や気流をはじめとして、ある一定の方向に動く水や空気、電流などの変わり続ける流れを示す「current」と、表面や他の流れの下にある目に見え難い流れや暗示を意味する「undercurrent」をキーワードに、場所とかかわり合いながら表現をつむぎ出す国内外のアーティスト、そして青森ゆかりの表現の数々が集います。加えて、会期半ばで展示替えをすることで、一度限りでない場所への働きかけや、変化し続ける「いま」をこの場に取り込むことを試みます。
それぞれの表現が発生させる流れや渦のようなものが、出会い混ざり合うことで、また新たなパターンが無数に生成させていく…展覧会という「徒歩旅行」を通して、私とあなたの現在地を確かめながら、変わり続ける物語の意味を、ここで少しだけ分かち合うことができたら幸いです。
ジュマナ・エミル・アブード(Jumana Emil ABBOUD)、青野文昭、岩根愛、是恒さくら、工藤省治、光岡幸一、中嶋幸治、澤田教一、鈴木正治、ロビン・ホワイト(Robin WHITE)、アイヌの衣服(青森市教育委員会所蔵、後期のみの展示)
会場構成 山川陸
キュレーター 慶野結香