「フルクサス・オーケストラ」、「フルックス・ショップ」、「フルックス・スポーツ」、「フルックス・フード・アトラス」、「フルックス・ラビリンス(迷路)」、「フルックス・トイレット」、「フルックス・ウェディング」…。1960年代から70年代にかけて、アメリカ、ヨーロッパ、日本の各地で展開したフルクサスは、音楽、詩、美術、映画、演劇など様々なメディアを横断し、一見芸術とは無関係の食事やスポーツ、さらに清掃や冠婚葬祭をも取り込み、多岐にわたる活動を繰り広げました。フルクサスとは、確固としたグループでも運動でもなく、主唱者である“議長”ジョージ・マチューナスを主軸に、人種や国境を越えて共感した作家同士が機会に応じて集った特異な“動き”であり、既存の美術観念に拠らず、日常の中に“芸術”を見出そうとするその精神は今も大きな影響を与え続けています。日本からも靉嘔、一柳慧、オノ・ヨーコ、久保田成子、小杉武久、斎藤陽子、塩見允枝子、刀根康尚、ワダヨシマサら多くのアーティストが参加し、重要な役割を担いました。
1994年の「フルクサス展」(ワタリウム美術館)、2001年の「ドイツにおけるフルクサス1962-1994」(国立国際美術館)に続く本展は、国内の美術館で自主的に企画されるはじめてのフルクサス展となります。日本のアーティストや動向を見据えながら、国内収蔵の作品資料約500点をもとに、音や映像、出版物、パフォーマンス等、様々な角度からフルクサスを紹介します。絵画でも彫刻でもなく、まずパフォーマンスありき!のフルクサスを実際に体験できる機会も設ける予定です。
まさに芸術と生活の垣根を越え、ジョークとしての芸術、“アート・アミューズメント”を標榜したフルクサス。凝り固まった「芸術」の枠に捕らわれることなく、ユーモアやウィットに富んだフルクサスの世界をぜひ体感してください。