本展ではパソコン上で出版物や印刷物のデータ制作を行うDTP環境やインターネット上のコミュニケーションが普及してきた1990年代以降のグラフィックデザインを、日本語の文字とデザインの歴史を前提に紐解いていきます。
展示の中心となるのは国内外約50組のグラフィックデザイナーやアーティストによるクリエイションの数々。漢字や仮名の使い分け、縦横自在の書字方向、ルビといった特有の表現方法をもち、文字とイメージの混ざり合いのなかで発展してきた日本のグラフィック文化が、グローバルなデジタル情報技術とどう向き合い、何を生み出してきたか、そして今どのような可能性をみせているかを「造形性」「身体性」「メディア」など13の現代的なテーマに分けて紹介します。
近年のデジタル技術とインターネットの発達は、ビジュアルコミュニケーションのグローバル化と画一化を急速に押し進めています。しかし、漢字、ひらがな、カタカナといった複数の文字を併用し、言葉と絵が混ざり合うように発展してきた日本のビジュアルカルチャーは、このグローバルな枠組みに収まりきらない多様性や運動性を内蔵しています。このような文脈を受け継いだ現代日本のグラフィックデザインがみせている豊かな可能性を「文字とイメージ」を軸に探ります。
展覧会ディレクター|室賀清徳