「超絶技巧、未来へ!明治工芸のDNA」展への出品で、益々注目を浴びる切り絵作家の盛田亜耶。盛田は西洋美術史の名画から着想を得て、現代の女性をモデルに原画を描き、切り絵として制作を続けています。2年ぶりの個展はサンドロ・ボッティチェリの名作《プリマヴェーラ》の中心のアフロディテ(女神)を描き、切り抜いた大作をはじめ西洋美術と解剖学への興味を合体させた新作を展覧します。
プリマヴェーラ追想
盛田 亜耶
ボッティチェッリの『La Primavera』のアフロディーテ(女神)に焦点を当て取り組んだ作品。周りの人物は数人の手を残して姿を消している。原画を知る人も知らない人も神々の姿や切れている手の先を想像したり、本来ないのにあるものの意味を考えたりするだろう。
私は、つねに西洋美術史で受け継がれてきた宗教的伝統や登場人物の概念を崩して再構築を試みている。理想化された女神の描写をアジア人に置き換え生身の人間としてとらえ、私自身の持つ聖なるイメージを反映した。周りに飛び交う群蝶は魂と変化の象徴である。紙を切る手法を使い、自分の視覚的表現とアイデンティティのかたちを構成する力を探っていきたい。