2023年4月に亡くなった島根県吉賀町出身の彫刻家、澄川喜一。
当館では、開館時の2005年から2022年まで、17年にわたり島根県芸術文化センター長(兼 島根県立石見美術館長)を勤めました。その間、益田市と居住地である東京とを何度も往来し、郷里である石見地域の文化振興と、街の活性化に力を尽くしてきました。
澄川は、高校時代を過ごした山口県岩国市で、錦帯橋の魅力に目覚めて以来、長年、木や石の性質を活かした抽象彫刻の制作に従事しました。母校である東京藝術大学で教授となり後進を育て、同大学の学長に就任。一方で毎年のように新たな作品を新制作協会展や個展で発表することも欠かしませんでした。全国各地で野外彫刻の制作や、都市部の環境造形の仕事も数多くこなし、特に東京スカイツリーRのデザイン監修を担ったことで広く世間の注目を集めました。2020年には、こうした数多くの功績が表彰され、文化勲章を受章しています。
本展では、このたびの逝去を悼み、これまで当館に寄贈された作品を中心に、澄川が生涯一貫して追い続けた「そりのあるかたち」をテーマにした作品群約40点を紹介し、創作の軌跡を振り返ります。