テレビアニメ「一休さん」主人公とんち小僧一休の名脇役として、おなじみの蜷川新右衛門さん。その一族・蜷川家のルーツですが、実は越中(えっちゅう)国蜷川(現富山市蜷川)に求められます。初代にあたる宮道親直(みやじちかなお)が、源平合戦の時代に蜷川を所領としたことから、蜷川を名字に定めたのです。現在も蜷川の地には、蜷川家の菩提寺として栄えた最勝寺が、同家ゆかりの品々を伝えています。
越中で創始された蜷川家は、室町時代に入ると丹波(たんば)へ本拠を移し、四代にわたって当主が新右衛門を名乗り、室町幕府のもとで政所代(まんどころだい)という要職を勤めていきました。その後、戦国の動乱によって幕府が衰えると、出羽(でわ)や土佐(とさ)などへの遍歴を余儀なくされます。しかし、江戸時代には大身の旗本となり、明治の世を迎えました。なお、蜷川家に伝えられていた文書群は、室町幕府研究に不可欠な史料として現在知られています。
本展では、県内外に残る歴史資料などから、越中への土着から京都への進出、室町幕府政所代としての活躍、江戸期の展開など、知られざる富山ゆかりの「蜷川新右衛門さん」一族の盛衰に迫りたいと思います。