明治時代における西洋文化の到来は、絵画を鑑賞する場に地殻変動をもたらしました。特に西洋に倣った展覧会制度の導入は、座敷や床の間を「棲み家」とした日本絵画を展覧会場へと住み替えさせました。その結果、巨大で濃彩の作品が増えるなど、日本絵画は新しい「家」にふさわしい表現へと大きくシフトしていきます。このような時代のなかで集められた泉屋の日本画は、むしろ邸宅を飾るために描かれたもので、来客を迎えるための屏風や床映えする掛軸など、展覧会を舞台とする「展覧会芸術」とは逆行する「柔和な」性質と「吉祥的」内容を備えています。本展では、かつて住友の邸宅を飾った日本画とその取り合わせを展観し、床の間や座敷を飾る日本画の魅力を館蔵品から紹介します。また現代の作家が「床の間芸術」をテーマに描いた作品もあわせて展示し、いまの「床の間芸術」とは何かを考えます。