そりゃあ人のする事は全て行為で説明出来るさ。
ただし続けてこう言わないといけないんだ、
説明出来る事は全て行為で説明出来る。
そして説明出来る事はほとんど無いのだと。
俺が自由について言えることは俺はどうフレームを作ってるかぐらいなんだよ。
2023年8月 小林正人
小林正人の作品はどれも決められた形がなく自在である。キャンバスを張りながら描くという制作スタイルには類例がない。作品のタイトルは絵画の子、Unnamed、名もなき馬、など匿名性を持ってカテゴライズされることを拒否している。これを果たして絵画と呼べるのだろうか?しかしそもそもこの世界ではそれ自体で完結しているものなど何もないのに、イメージは現実から切り離されて決められた四角い場所の中に存在するものだと誰が決めたのだろう。
小林正人はこの世界の全ては「画(絵)の景色」だという。そしてその世界には様々な「枠」がある。社会の枠、現実の枠・・・枠がなければなにも存在しないに等しい。そのため小林が呼ぶ「自由」とは、枠を無視して好き勝手に行動するといったような話ではない。そうではなくて、人間が想像力を武器にどのように世界を切り取るのか、絵画は果てなく広がる現実のどこまでをその身体に引き受けるのか、その外枠をアーティストはどう設定するのか、そのようなことが芸術の自由に関わる問題ではないだろうか。
今展は三つの大きな床置き作品によって作られる。新作の「画家」はもともと2004年にスウェーデンのテンスタ・コンストハルで開催された個展Starry Paint展のために作られた作品の一部だった。2x10mという巨大な作品は展覧会終了時に小林によってバラバラにカットされ、切れ端としてベルギー・ゲントへ持ち帰られた。そしてそれらの多くは姿を変えて小さな星のような作品に生まれ変わり、本作も同様に全く新しい存在として現在の空間に登場する。またモデルの身体的な痕跡から描き起こされた「この星のモデル(手袋を脱ぐカウガール)」、鞆の浦のアトリエから転々と旅をしてきたUnnamedなど 感覚を総動員して体感して頂きたい作品ばかりである。小林正人が初めてゲントで床置きの絵画を制作してから25年以上の月日が経った。芸術と芸術家の自由を体現し続けてきた小林正人の新作展をご期待ください。
2023年8月シュウゴアーツ