このたび福岡県立美術館では、博多に生まれ、昭和期の洋画界で大きな役割を果たした洋画家・児島善三郎(1893ー1962)の生誕130年の節目を記念する回顧展を開催します。西洋美術の模倣ではない「日本的油絵」とは何かということを常に考え、日本の伝統美術を踏まえた装飾的かつ大胆な表現と色彩が魅力的な児島は、1930年結成の独立美術協会のリーダーとしても大きな役割を担いました。
児島善三郎の回顧展としては久しぶりの開催となる本展では、初期から晩年に至るまでの代表作を数多く含めて画業の全体像を示しつつ、日本におけるフォーヴィスムのひとつの到達点ともいえる人物画や風景画、花の作品を紹介します。いずれも、時代を経た今でも古めかしさを感じさせない豪華絢爛な作品群です。
そしてまた本展では、児島善三郎がキャンバスに込めた“希望”をテーマとします。太平洋戦争という大きな時代の波に翻弄された画家が、代表作《春遠からじ》や《アルプスへの道》など、戦後に描いた風景画に託した、再生への切実な思いを読み取っていただければ幸いです。
絵描きとして生きることへの希望、永遠の美を探求することへの希望、そして描くことへのあくなき希望―児島善三郎の作品に宿されたポジティブなエネルギーは、今を生きる私たちの心にも希望の光をもたらしてくれることでしょう。