平櫛田中(1872~1979)が数え100歳の時に自ら創設した平櫛田中賞。彫刻界の発展を目的とした本賞は多くの優れた彫刻家たちに贈られ、日本を代表する彫刻賞として認知されています。
当館ではこのたび第30回平櫛田中賞受賞を記念して、棚田康司展を開催します。
棚田康司(1968~)は兵庫県明石市出身で、東京造形大学と東京藝術大学大学院で彫刻を学びました。2001年には文化庁芸術家在外研修員として7ヶ月ベルリンに滞在したことをきっかけに日本古来の一木造に目覚め、作品の方向性も定まります。以来、はかなげな表情をもつ少年少女を主要なテーマとして、個展や美術館での現代アート展を中心に発表を続けています。木彫における伝統性と現代性を高いレベルで融合させたその作品は常に彫刻界を刺激し続けています。
彫刻家で、平櫛田中賞の選考委員でもある三沢厚彦は「素材となる樟(くすのき)と身体性を同義の事物として扱う伝統的な木彫表現の継承者でもあるが、一方で移り変わる時代の中で人間の存在や多様性を常にテーマにしている」と記し、その発信性のある活動を高く評価しています。
本展覧会では初期から最新作までの自選作品を展示し、創作の軌跡をたどります。