はしもとみお(1980~)の作り出す動物たちの彫刻は、ぬくもりや息づかいまでも感じさせます。それは「どこかにいる動物」ではなく、はしもとみおの身近に暮らす動物や、旅先で出会い、ふれあった動物たち1匹1匹の個性や思い出をそのまま再現しているからでしょう。獣医になりたいと夢見ていた彼女は1995年に阪神・淡路大震災で被災し、動物たちのいる風景が一瞬にして失われるという光景を目の当たりにしました。この体験をきっかけに、たとえ失われた命であってもその輝きを彫刻という形で残したいと考えるようになります。
本展では「時間」をテーマに、モデルの動物たちが生きてきた時間と、はしもとみお本人の過ごしてきた時間とをつなげてその軌跡をたどります。新作を含む彫刻をはじめ、これまでに発表されていない、被災後から美術大学在学中の作品や、作品を制作するまでに丁寧に観察した動物たちのスケッチ、モデルそれぞれの個性を記録したメモなども多数展示します。
はしもとみおの作品を通じて、私たち人間とともに生きている動物たちの命を記憶する、形に残すという意味を感じていただける展覧会です。