●名品セレクション +新収蔵 アンドレ・マッソン
宮崎県立美術館は、現在約4,200点の作品を収蔵しています。これらは、次の3つの収集方針に基づいて収集されています。
1.郷土出身作家及び本県にゆかりのある作品
2.わが国の美術の流れを展望するにふさわしい作品
3.海外のすぐれた作品
ここでは、当館のコレクションを代表する国内外の名品を展示しています。今回は、作家独自の形態の表し方に注目しています。複数の視点で対象をとらえ、同一画面上に再構成したパブロ・ピカソの「肘かけ椅子のベルベット帽の女と鳩」、形を考えることから制作を始め、ユーモラスな形を描いた元永定正の「ぎざぎざのなかのきいろ」などを紹介しています。
また、昨年度に挿画本を新収蔵したアンドレ・マッソンの作品を初公開します。国内外の名品とあわせてお楽しみください。
●宮崎の美術 -新収蔵 根井南華
ここでは、宮崎県ゆかりの作家の作品を紹介します。中でも、宮崎県を代表する4名の作家は、年間を通して展示しています。
日本画家では、伝統的な狩野派の流れを汲む山水画で力を発揮した山内多門と、秀麗な美人画で広く知られていた益田玉城が挙げられます。一方洋画家では、塩月桃甫が台湾で美術の振興に努めるとともに、太い輪郭線と鮮やかな色彩で独自の画風を追求しました。また、力強い筆遣いで生命力あふれる女性像を描いた山田新一は中央画壇で活躍しました。今回は、山内多門や山田新一をはじめとする郷土作家の作品とともに、昨年度新たに収蔵した根井南華の日本画を、資料と併せて紹介します。
●ジャン・アルプ
ジャン・アルプ(1886-1966)は、幼い頃から音楽や文学、美術に親しみ、画家や彫刻家のみならず詩人としても、その才能を幅広く発揮しました。
アルプは、当時ドイツ領であったフランスのストラスブールに生まれますが、第一次世界大戦の戦禍を避けるためにスイスに住まいを変え、1916年、ダダイズム※に参加しました。その後、卵や木の葉、目玉を連想させるような、独特の抽象造形を発展させていきます。アルプが本格的に彫刻の制作を始めたのは1930年、44歳の時です。ブロンズで作られた「視聴覚の形態」は、なめらかな曲線と磨かれた金属の質感が際立っています。また、晩年に制作された「たがをはめ直された太陽」は自作の詩と木版画20点からなる詩画集に、そのうちの15点を和紙に刷った版画をセットにしたものです。
アルプが生み出す、抽象的でありながら人体や植物の形をイメージさせ、見る者にどこか親しみを感じさせる世界をお楽しみください。
※あらゆる権威や既成概念に抵抗し、芸術そのものまで否定しようとした運動。先入観や理性にとらわれない制作や既製品の使用などは、後の作家に大きな影響を与えました。
●瑛九の1957年
宮崎県出身の画家・瑛九にとって、1957年はその画業の上で最も大きな転機を迎えた年です。創設に関わり、中心となって活動をしていたデモクラート美術家協会が解散し、これを機に美術団体等での活動に区切りを付け、自身の制作に集中するようになったのです。
瑛九はこの年の1月には、油彩などでエアーコンプレッサーを用いるようになりました。型紙を使い、フォト・デッサンと同じような構成の作品も制作しました。作風もこの時期から変化が見られるようになり、碁石のような小さい丸を画面にちりばめたものや、幾重にも重なる円の中に、多数の小さな丸が描かれたものなど、点描へのアプローチが始まります。また、油彩のみならず、リトグラフや水彩、フォト・デッサンなど様々な技法においても、点描表現を取り入れるようになりました。最晩年の点描作品を描く起点となった年とも言えます。
ここでは、瑛九にとって特別な年と言える1957年に制作された作品を、資料とともに紹介します。