「新・今日の作家展」は、横浜市民ギャラリーが開館した1964年から40年間開催した「今日の作家展」を継承し、同時代の作家の表現を紹介・考察しています。今回は「ここにいる―Voice of Place」が副題です。場や土地には、歴史が紡がれるための時間とともに、人々・生物の身体や記憶、継承されてきた物事等、分かちがたい数多の要素が内包されます。それらは全て可視化され残るものではありませんが、そうした要素に眼差しを向け制作する作家2名を紹介します。
来田広大は、土地や場所と人との関係を探るため、山等におけるフィールドワークをひとつの拠点としています。そこから臨む風景を地図と捉え、作品に対峙した際「今ここにいる」という自覚を導く、チョークを用いた制作を中心に行っています。古橋まどかは、自身に関わる地域や場所の中にある自然や人工物の変遷や軌跡に着目します。自らの経験との関係性を掘り下げ、リサーチをもとに立体や映像、収集物を用いたインスタレーションを発表してきました。対人距離や移動に制限のあったコロナ禍を経た今、2名の作品に相対することは、土地や時間に思索を巡らせ、自己や他者に対する内的な気づきをもたらすことでしょう。