平塚市美術館では作品収集の活動を継続的におこなっています。本展では2021年度と2022年度に新たに収蔵された作品約40点を紹介いたします。湘南地域にゆかりのある作家あるいは企画展などをきっかけに寄贈・寄託となった作品です。
展覧会を契機に収蔵された作品のうち、内田あぐり《わたしの前にいる、目を閉じている #09T》は「湘南と作家Ⅱ」(2011年)に出品されたものです。人体の表現を追求してきた作家が、具体的なイメージを解体し、画材の物質性や偶然にできる色や形を画面にあらわそうとしたシリーズの1点です。遠藤彰子《岐路》は「物語る 遠藤彰子展」(2021年)に出品されました。魚眼レンズのような視野で見る風景は、都市風景を描いた一連の作品に数えられます。このほか、大沢昌助や島田章三、髙良眞木など当館におなじみの作家の新たな顔ぶれをお楽しみいただければ幸いです。
また、展示室内に特集コーナーを設け、2018年度に寄託された藤田嗣治の油彩画《おことさん》(1909年)をその関連作品10点とともに展示します。本作品は藤田が東京美術学校在学中に描いたもので、画業の最初期における貴重な作例として位置づけることができます。当館で1993年に開催された企画展「湘南の美術と文学」以来30年ぶりの公開となり、タカシマヤ文化基金の助成を得て修復処置と光学的調査をおこなった成果ともに紹介します。