この展覧会は、欧米と日本および極東アジア地域において、1870年から1945年まで、すなわち印象派の時代に始まり、第二次世界大戦の終結にいたる70年あまりの間に制作された、絵画・写真における「風景」表現を紹介します。都市と地方の対比、ユートピア思想の影響、戦争や植民地支配との関係など複数の視点に立って風景表現の多様な展開をたどりながら、その背景にある社会的・政治的文脈をとらえ直そうとするものです。近代の風景表現を通観するとき、楽園を追放された人間が途方に暮れて立ちすくむ、いわば「失楽園」の眺めをその基本的な条件としていることが分かります。本展では、「失楽園の時代」にほかならぬ近代にあって、画家・写真家がいかに風景の理想と現実の両極に引き裂かれつつ格闘したか、そのいくつかの様相を、約310点にのぼる豊富な作品によってたどります。また、19世紀末に発明され、ほどなく大衆文化の中心に位置した映画における風景表現を併せて紹介します。