浮世絵に、名所名物を描いたものや美人を描いたものの他に、説話、物語、芝居などを題材にした作品が多くあります。絵師たちは物語や芝居からイメージを膨らませ、登場人物の動きを印象的な構図で切り取りました。そのような作品は多くの人々の目を引き付け、書見や観劇の感動を追体験させたものでした。本展で出陳する歌川国芳画「木曽街道六十九次之内」は、物語や芝居を題材にした場面と宿場名を言葉遊びでひも付ける揃物です。その関連性を考えながら、描かれる物語や芝居の名場面をお楽しみください。
また、狂歌が記された作品もご紹介します。歌川広重が手掛けた東海道物の一つに、「狂歌入東海道」と通称される「東海道五拾三次」があります。各図に旅中の心境やその地にひも付けた狂歌が添えられ、歌の解釈と共に作品の理解を深める楽しみがあります。それぞれに浮世絵の中で語られた物語、詠われた歌を読み解いていきます。