画鋲、スーパーボール、ハンマー…生活にあふれる慣れ親しんだ日用品が、冨井大裕(とみい・もとひろ|1973年 新潟市生まれ)の手にかかると、その色やかたち、性能をもったまま思いがけない造形となり、「作品」の姿を現しはじめます。日用品のかたちとは、それが果たすべき機能がもたらしたものであり、そうでなければそのかたちにはなっていません。では、それらが「純粋な作品―彫刻」となった時、そのかたち、その造形を、わたしたちはどのように「みる」ことができるのでしょうか?
同じようにひとの手によってつくられたモノでありながら、どこから「作品」が始まるのか、モノを介してその「出来事」を冨井は見つめ続けてきました。作品が世界にただひとつであるということ、わたしたちひとりひとりがそれに出会うということはどういうことなのか、美術館をまるごと使った、展覧会という非日常の体験、「みるための時間」をお楽しみください。