既存の美術の枠組みを超えて幅広い分野で活動し、常に社会と関わり力強いメッセージを発信し続けた岡本太郎。岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)は、岡本太郎の精神を継承し、自由な視点と発想で、現代社会に鋭いメッセージを突きつける作家を顕彰するべく創設されました。これまで26回を数えるTARO賞からは、国内外で活躍する作家を数多く輩出しています。当館では、本賞の受賞作家による選抜展を「TARO賞の作家」というシリーズで開催してきました。
シリーズの第3回となる本展では、「境界」をテーマに内海聖史、大西康明、若木くるみの3名の作品を展示します。色彩豊かな絵画作品を制作する内海聖史。内海は、絵画は画面だけで完結するものではなく、空間の中にさまざまに配置することで、観る者の動きや感覚に働きかけるものとして、絵画のあり方を問いかけます。「あること」と「ないこと」の関係性を、一貫したテーマとして作品を制作する大西康明。私たちの日常の中に確かに在りながら、捉えられない事象を作品によって顕在化します。大学で木版画を学んだ後、自身が作品の一部となるパフォーマンス作品でTARO賞に参加した若木くるみ。森や波などの自然や日用品など、私たちの身の回りにある多様な素材を使い、版画の可能性を探ります。
この数年、私たちを取り巻く世界のさまざまな「境界」が、かつてないほど揺らぎ、分断され、強く意識されるようになりました。3名の作家が紡ぐさまざまな「境界」は、私たちが自己の存在や自分を取り囲む世界について再考し、新たな視点を得るための手がかりとなるでしょう。