18世紀から19世紀にかけて大きく発展した英国の姿を、当時流行したボタニカルアート約150点や、ウェッジウッドの美しい陶磁器約40点を通して紹介する展覧会です。ジョージ3世の時代、英国では産業だけでなく学問や文化がかつてない隆盛を見せました。その一翼を担ったのが英国王室です。とくにシャーロット王妃は自然科学や文化に強い関心を持ち、植物標本や植物誌を収集するとともに植物画を習うなど、その発展に寄与しました。やがて、植物学とボタニカルアートは一般の人々へも広まり、流行していくこととなりますが、それをけん引したのは、1787年に創刊し、現在も英国キュー王立植物園が発行している植物誌『カーティス・ボタニカル・マガジン』でした。植物学者だけでなく、園芸を愛する一般市民の手にも渡った本誌は、一点ずつ手で彩色された美しい図版によって大きな人気を博しました。また、この時代には東方や南半球へ冒険家が進出し、世界各地の植物を盛んに収集したため、その影響を受けて次第に新来の植物を収録するようになり、多種多様な植物の姿を人々に伝える役割も果たしました。
一方で、英国の発展は陶磁器産業にも支えられていました。1759年に創業したウェッジウッド社は、シャーロット王妃からの庇護を受けたことによって、国内最大の産業として成長を遂げます。創業者のジョサイア・ウェッジウッドが技術革新や経営への工夫を重ねて開発したクリームウェアは、シャーロット王妃より「クイーンズウェア」の称号を与えられ、ウェッジウッドの陶磁器は当時の人々の生活に浸透していきました。
本展では、英国の人々の教養と生活の質の向上に多大な影響を及ぼしたことで、「啓蒙時代」を象徴するものとなったボタニカルアートとウェッジウッドの陶磁器を展覧し、世界に先駆けて発展を遂げた英国の一時代を紹介します。